【無期転換対策】企業の対策の進め方(その②) 何も対策をしないとどうなるか

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2017年06月21日

【無期転換対策】企業の対策の進め方(その②) 何も対策をしないとどうなるか

 

前回の(その①)で無期転換制度を規定する労働契約法18条をご説明しました。これで無期転換制度の概要を理解されたと思います。

 

今回は、企業が無期転換制度の対策をしないと、どのような問題がおこる可能性があるかをご説明します。

 

【2】何も対策をしないとどうなるか

 

有期労働契約が5年を超えて反復更新されたパート、アルバイト、契約社員、嘱託社員等の社員から、期間の定めのない労働契約の締結の申込をされた場合、使用者は拒否できません(申し込みを承諾したものとみなされます)。次の契約からは無期労働契約になります。        スーパーの店員さんのイラスト

 

ここで注意しなければならないは、無期転換することにより無期労働契約になりますが、正社員になるわけではないということです。

現在の労働条件のうち契約期間が無期になるだけで、それ以外は変わりません。(ただし別段の定めにより労働条件を変えることはできます。)

 

それでは無期転換した社員の労働条件は有期労働契約の時のまま何もしなくても良いのでしょうか?

 

例えば、定年の問題があります。有期労働契約であれば期間満了時に契約を更新しなければ終了しますから、定年の心配をする必要はありません。ところが無期転換社員に定年の定めがないと終身雇用になってしまいます。正社員(無期雇用フルタイム勤務)が60歳定年で65歳まで再雇用する制度にしている会社でも、無期転換社員は本人が自分から退職しない限り終身勤務できることになります。会社は長期間または超長期間雇用しなければならなくなります。その間には事業環境の変化や業績変動や事業の統廃合もあり得ます。その時に無期転換社員への対応はどのようにするのでしょうか。正社員のように配転はできるのでしょうか。

定年がある正社員から不満も出てきます。ですから無期転換社員にも定年を定めなければなりません。

 

また、無期転換社員用の就業規則も手当しなければなりません。正社員用の就業規則が「この就業規則は、期間の定めのない従業員に適用する」となっている場合、そのままにしておくと無期転換社員にも正社員の処遇が全て適用されてしまう可能性があります。

そうなると「無期転換社員にも賞与、退職金を支給すべき」「休職制度を設けるべき」ということになりかねません。

 

このように、予想外のリスクを防ぐために、正社員の就業規則が無期転換社員には適用されないようにすることや無期転換社員用の就業規則を新たに作成する等の事前の手当が必要になってくるわけです。