【労働基準法】賃金請求権の時効が5年になると? 影響は甚大か?

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2018年02月14日

【労働基準法】賃金請求権の時効が5年になると? 影響は甚大か?

現在、厚生労働省の「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」で、賃金債権の消滅時効のあり方について検討されています。

その背景は、2020年4月1日に施行される民法改正で、一般債権の消滅時効の期間が統一されるためです。

 

この民法改正では、職業等によって1~3年と分かれていた短期消滅時効の規定を廃止し、①債権者が権利を行使することができると知った時(主観的起算点)から5年間行使しないとき、もしくは②権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年間行使しないときは、時効によって債権が消滅すると統一されます。

 

一方で、民法の特別法である労働者保護を目的とする労働基準法は、民法の消滅時効の特則として第115条に賃金等請求権の消滅時効期間が定められており、賃金、災害補償その他の請求権は2年、退職手当の請求権は5年となっています。このままいくと労働基準法の消滅時効期間が民法の消滅時効期間より短くなってしまいます。

 

検討会では、民法の改正を踏まえ、労働基準法第115条の対象となる賃金等請求期間の消滅時効期間や、これまで「権利を行使できるときから」と解釈されてきた消滅時効の起算点、さらに2年とされる年次有給休暇請求権の消滅時効(繰越期間)のほか、労働基準法第109条で3年間保存が必要とされる労働者名簿や賃金台帳などの重要書類の保存期間などを論点に検討を進めていく方向です。

 

この検討結果如何では、会社経営に与える影響が非常に大きくなります。

例えば、労働者からの未払い残業代請求は、現在は最大2年間分しか請求できませんが、これが5年になるとどうなるか。これに付加金が加わったらどうなるか。年次有給休暇の時効が現行の2年から5年に拡大されたらどうなるか。労働時間管理、給与支給、休暇管理等に関する諸記録資料・書類・データの保管をどうするか等々です。

 

論議の行方を注視していく必要があります。

 

いずれにしても、日頃から労働者の労働時間の把握と管理をしっかりして、きちんと残業代を支払っていればあまり心配する必要はないのではないかと思われます。