【メンタルヘルス】気分の変化を記録しましょう

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2019年02月19日

【メンタルヘルス】気分の変化を記録しましょう

シリアスな問診のイラスト

メンタル不調になった時に、医療機関で適切な治療を受けるために参考になる情報をご案内します。

 

出典は、毎日新聞2018年1月21日朝刊に掲載された東京大学教授、精神科医の佐々木司先生の記事からです。

 

 

好調・不調を記録しておこう

 

「人間万事塞翁(さいおう)が馬」と言うように、良いこと、悪いことは互いに繰り返しやってくる。生活上の出来事だけでなく、気分や体調も同じだ。常にいい時ばかりではないが、悪い時がずっと続くわけでもない。ただ調子の悪い時は、ついそのことを忘れて、悪い状態がいつまでも続くように思いがちだ。調子の良い時より悪い時の方が記憶に残りやすいのも厄介だ。

 

 診察室で「調子が悪くて」と訴える人に「いつからですか?」と尋ねると、大概は「このところ、ずっとそうです」との答えが返ってくる。ところが、カルテを見るとそうでもない。「1カ月前は『とても調子が良い』とおっしゃってましたよ」と伝えても覚えていないことが多く、記載内容を詳しく教えてようやく「あ、そうでしたね……」と納得する。  

 

さらにカルテをさかのぼってみる。「この頃も調子が悪かったようですが、その前後の診察では問題なかったですね」と教えてあげると「良い時も悪い時も繰り返しているし、悪い時がいつまでも続くわけではない」と理解してもらえる。  

 

人の記憶はあてにならない。今の悪い状態はずっと前からのもので、この先いつまでも続くと勘違いしがちだ。

 

そのため診察では、受診する人に記録を付けるよう勧めている。

 

方法はいろいろあるが、毎日の睡眠の時間帯を記録する用紙に気分の欄を設けて書いてもらうことが多い。これを付けていると、忙しくて寝不足の日が続いた後に調子の悪い日が続いたとか、調子に乗って夜更かしを続けた後に悪くなったとか、調子と生活との関係も分かる。  

 

ただ、毎日の記録はきちょうめんでないと続かない。

 

もっと簡単に、良い日、悪い日だけカレンダーや手帳に印をつけてもらう手もある。カレンダーは1年分が1枚にまとまっているタイプが、数カ月や年間の変化がひと目で分かるので便利だ。  

 

精神科の診察では、症状の時間的な変遷を把握することが診断や治療方針を考える上で極めて重要なので、こういう記録を持ってきてもらえると役に立つ。特に最初の診察の時などは助かる。受診者の記憶を頼りに聞くよりずっと正確だし、詳しい情報が得られるからだ。記録を付けた本人にとっても、どういう時に調子が悪くなりがちか自分で把握できるので、予防や体調管理に役に立つ。  

 

受診の有無に関わらず、調子が気になる人は試してみてはいかがだろう。