【新型コロナウイルスに関する労働問題】マスクつけずに会議出席、「買えなかった」嘱託男性を懲戒処分…大阪の専門学校

カテゴリ
ニュース
コラム
労務ニュース

2020年04月29日

【新型コロナウイルスに関する労働問題】マスクつけずに会議出席、「買えなかった」嘱託男性を懲戒処分…大阪の専門学校

マスクを付けた配達員のイラスト(男性)

最近報道されたニュースの概要は以下のとおりです。

 

マスクを着けずに会議に出席したことを理由として、大阪の学校法人が、嘱託職員の男性(60歳)を出勤停止処分にした。男性は会議にマスクを着けずに出席し、会議後、法人幹部からマスクを着用しなかった理由を聞かれ「どこに行っても買えない」と返答した。後日、法人幹部から「感染源になったらどうするのだ」などと糺され、顛末書を提出して説明しようとしたが「受け取れない」と言われて4日間の出勤停止の懲戒処分を受けた。

 

 

今後、このような問題が各所で起こる可能性があります。

 

労働問題に詳しい杜若経営法律事務所が発行している資料では、このように説明されています。

 

 

Q 従業員にマスク着用を命じることは可能でしょうか。その場合マスクは会社が費用を負担してマスクを用意すべきでしょうか。

 

A 会社が費用を負担してマスクを用意し、従業員に支給するのであれば、マスク着用を命じることは可能と考えます。会社がマスクを支給しないのであれば、着用を命じることは難しく、協力を求めることができるにとどまると考えるべきでしょう。

 

【解説】
(1)マスク着用を命じることの可否
会社が感染予防策の一つとして従業員にマスク着用をお願いするだけでなく、着用を命じることは可能でしょうか?従業員がマスクを用意できないのに、会社がマスク着用を命じても、従業員としては命令に従うことができませんので、このような場合はマスク着用を命じることはできないでしょう。会社がマスクを用意し支給した上でマスク着用を命じることはどうでしょうか?ヘルメットや防塵マスク等の保護具と同様に考えれば、従業員の安全を守るためにマスク着用を命じることも、理論的には可能と考えます。マスク着用は感染予防策の一つとして命じる必要性がありますし、命じられる従業員にも特段不利益を課すわけでもありませんので、着用を命じることも可能と考えます。

 

 

 (2)マスクを着用しない従業員を懲戒処分できるか
会社がマスクを支給して着用を命じたにもかかわらず、従業員がこれに従わない場合、業務命令違反に当たりますので、理論的には指導や懲戒処分の対象になります(マスクを支給しない場合は、そもそも命じることができませんので懲戒処分もできません)。もっとも、会社として考えなければならないのは、感染予防であり、従業員の生命、身体の安全です。実務的には懲戒処分等を検討するよりも、マスクを着用しない従業員を説得し、マスクを着用してもらうことが重要だと思います。それでも着用しない場合は、会議に出席させない、他の従業員から距離を置いて業務を行ってもらう、場合によっては自宅待機を命じる等により対応すべきではないかと思います。