2020年06月05日
【新型コロナウイルスに関する労働問題】新型コロナウイルスの影響で当面の間は店舗を閉鎖し再開の目処がたたないので、店舗で働いている従業員数名に辞めてもらうときの注意点
労働問題に詳しい杜若経営法律事務所が公開している資料では、以下のように説明しています。
(回答)
やむを得ず従業員に辞めてもらう場合であったとしても、一方的に解雇をするのではなく、まずはきちんと事情を説明し従業員に納得してもらいましょう。
【ポイント】
〇労働契約を解消する場合であっても、一方的な解雇は避け、まずは労使間で話し合いきちんと事情を説明し従業員に納得してもらうことが重要です
○ 話し合いの際は解雇されたとの誤解を与えないよう、伝え方に配慮しましょう
[解説]
(1)解雇と退職勧奨の違い
前提として、雇用関係の解消は従業員にとって生活の基盤を失う可能性があるものです。そのため、雇用調整助成金の特例措置を利用できないか、行政機関や金融機関が出す雇用維持支援策を利用できないか、テレワークを活用できないかなどを検討しながら、可能な限り雇用継続を図ることが望ましいといえます。
諸般の事情からやむを得ず雇用関係の解消に踏み切る場合であっても、雇用関係の解消が従業員にとって重大な事柄であることや、法律上の規制があることなどを理解した上で、慎重な手続き・配慮のもとに行う必要があります。
会社からの働きかけで従業員に辞めてもらう場合、2つのケースが考えられます。会社と従業員との話し合いを通じて従業員自らの意思で退職に応じてもらうケース(退職勧奨といいます。)と、従業員の意思にかかわらず会社から一方的に労働契約を終了させるケース(解雇といいます。)です。
解雇の場合、法律上の規制があり適法性が厳格に判断されることとなります(労働契約法16条。)。なにより、従業員本人の意思に関係なく行われるものなので後々のトラブルに発展しやすいといった点があります。
したがって、解雇は極力避けたほうがよいと考えられます。
労働関係の解消という労働者に重大な事柄であることからすれば、後々のトラブルを避けるためにも、まずは会社として誠実に話し合いを行うことが重要です。退職勧奨は、会社と従業員との間で退職に向けた話し合いは行いますが、実際に退職するかどうかの決定は従業員自身が行います。そして、従業員が退職に応じる場合には、会社と従業員との間で労働契約の終了の合意をすることになります。
(2)退職勧奨時の注意点
退職勧奨を行う際には、きちんと会社の状況や今後の見通しなどの事情を説明した上で、従業員本人に納得して退職に合意してもらうように進めることが大切です。あくまでも退職するかどうかの決定は従業員にあるので、会社が本人に退職を強要するかのような言動は違法になります。
また、従業員本人が解雇されたと誤解を受けないように、解雇ではなくきちんと退職勧奨であることを明確に伝えることも大切です。従業員側から「解雇にしてください」といわれた場合であっても、安易に解雇の通知をすることは避けてください。解雇は一方的な使用者側の意思表示なので、解雇の同意はあり得ず一方的に会社が解雇したと判断される可能性があります。
他方、自主的な退職に応じてくれる従業員に対しては、今後の生活保障等の観点から一定の配慮をすることも検討した方がよいでしょう。具体的には、退職金の加算や解決金の支給を行うことなども柔軟に検討することが望ましいですし、もし従業員からの補償等の要求があった場合にも誠意をもって対応すべきです。また、離職票の作成時には退職理由を定める必要がありますが「会社都合」とすることで、失業給付金の支給開始日や支給日数等の点で従業員には有利になります(ただし、キャリアアップ助成金など各種助成金を利用している場合、現時点では会社都合退職とすることにより助成金が不支給となったり返還を求められることがありますのでご留意ください)。
なお、再雇用を必ずするという約束のもとで従業員を退職した形にして、再雇用までの期間中に失業給付金を従業員が受給した場合、失業給付金の不正受給と認定される可能性があるのでご注意ください。