【新型コロナウイルスに関する労働問題】新型コロナウイルスの影響で事業場を休業せざるを得なくなった場合、派遣会社から受け入れている派遣社員の派遣料金を派遣会社へ支払わなければならないか。

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2020年06月08日

【新型コロナウイルスに関する労働問題】新型コロナウイルスの影響で事業場を休業せざるを得なくなった場合、派遣会社から受け入れている派遣社員の派遣料金を派遣会社へ支払わなければならないか。

派遣社員のイラスト

 

労働問題に詳しい杜若経営法律事務所が公開している資料では、以下のように説明しています。

 

(回答)

派遣元会社との間で交わされている派遣契約の定めに従って処理されることになります。派遣料金についての条項が存在しない場合には、民法の原則に従い、休業が派遣先の責めに帰すべき事由に基づくものかどうかで派遣料金支払いの要否が決定されま
す。

 

【ポイント】

○ 派遣先と派遣元との間の事項については、まずは契約内容(派遣基本契約書や派遣個別契約書)の定めを確認する必要があります
○ 契約条項内に休業の扱いが明確に記載されていない場合には、民法の原則から判断がなされることになります

 

[解説]

(1)あくまで派遣先会社・派遣元会社間の契約

労働者派遣契約は派遣先会社・派遣元会社との間の B to B の契約であり、休業した場合の派遣料金の支払い方法も、契約の定め(派遣基本契約書や派遣個別契約書に定められている可能性があります)に従って処理されるのが原則です。例えば、端的に「派遣労働者が就労しなかった場合、派遣元は派遣料金を請求することができない」との条項が置かれている場合には、派遣先は派遣料金の支払いを行う必要はありません。

 

(2)対応する条項がない場合

派遣先会社・派遣元会社間で交わされた契約の中に上記のような対応条項がない場合には、民法の原則に基づいて判断されることになります。すなわち、派遣先の責めに帰することができない事由に基づいて休業した場合には派遣料を支払う必要がありませんが(民法第536条1項)、派遣先の責めに帰すべき事由に基づいて休業した場合には、派遣料金を支払う必要があります(民法第536条2項)。 いずれかに該当するかは休業に至った理由等から総合的に判断されますが、例えば行政からの営業停止の指示に基づき休業した場合には、通常、「派遣先の責めに帰すべき事由」はないものと考えられ、派遣料金は発生しないと考えられるでしょう。

 

 

それでは新型コロナウイルスの影響から派遣契約を打ち切らなければならなくなった場合に留意すべきポイントはどこにあるでしょうか。

 

(回答)

派遣元との契約内容に基づき適切な対応を行う必要があります。

 

【解説】
派遣元会社との間で期間中に派遣契約を解除するにあたり、契約内容に従い次の措置をとる必要があります。(派遣法第29条の2、厚労省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」)。

 

① 派遣元事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元事業主に解除の申入れを行うこと
② 当該派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること
③ 派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い当該派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされたことにより生じた損害の賠償を行うこと
④ 派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合であって、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行った理由を当該派遣元事業主に対し明らかにすること

 

③の「派遣先の責に帰すべき事由」による派遣契約の解除といえるかどうかは、解除に至った理由等から総合的に判断されることになります。