【個別労働紛争】都道府県労働局からの解決支援事例のご案内(その4神奈川労働局)

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2021年07月27日

【個別労働紛争】都道府県労働局からの解決支援事例のご案内(その4 神奈川労働局)

ふさぎ込む人のイラスト(男性会社員)

労働者と事業主との間の雇用均等関係法に関するトラブルを、都道府県労働局長が公平・中立な立場から、当事者双方の意見を聴取し、問題解決に必要な具体策を提示(助言・指導・勧告)することによりトラブルの解決を図る制度が「労働局長による紛争解決の援助」です。

 

この制度には調停もあり、弁護士等の労働問題の専門家である調停委員が労働者と事業主双方から意見を聴取し、調停案の受諾を勧告することによりトラブルの解決を図ります。

 

神奈川労働局が公表している令和2年度の労働局長による紛争解決の援助事例をご紹介します。

 

 

事例1 パワーハラスメント援助事例
【事案の概要 申立て内容】

正社員Cは事務職として勤務していたが、店長から仕事を与えられない等の複数のパワーハラスメントを受けていることについて、社内のハラスメント相談窓口に相談した。相談窓口での面談において、面談時間が制限され、パワハラの全ての聴取がされず、途中で打ち切られた。全てのパワハラについて、対応してもらいたい。

【労働局の援助内容】
会社に対して事情聴取を行った結果、会社はハラスメント防止に取り組んでいるとのことであり、Cからの相談についても店長や他の従業員にヒアリングを行っているところであり、対応をしているところだった。会社はパワハラ防止措置について、他のハラスメントと一体的な取組を行っており、本件についても対応を行っていたものの、Cと会社の認識に違いがあり、会社が改めて再度面談の場を設け、Cの言い分や希望等を十分に聴き、丁寧な対応を行うよう助言を行った。会社は至急対応の場を設けるとし、Cはそれに応じた。会社はCと十分な時間をとって面談を行い、Cの希望とそれに対する会社の今後の対応について書面に起こし、双方署名の上取り交わした。Cは会社が対応を進めることを約束したことで納得し解決した。

 

 

事例2 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う母性健康管理措置の援助事例
【事案の概要 申立て内容】
工場の事務職正社員Aは、妊娠中であり、医師から新型コロナ感染症予防のため、休業の措置を求める内容の「母性健康管理指導事項連絡カード」が発行され、本社の総務担当に提出をしたが措置を講じてもらえない、早急に措置を講じてもらいたい。
【労働局の援助内容】
会社に対して事情聴取を行った結果、会社はAにすぐに休業を認めるとAに回答していたとのことであったが、引継ぎについて明確に示していなかったことから、引継ぎ方法等について明確にし、Aが安心して休業できるよう丁寧な対応を行うよう労働局から助言した。
会社はAが担当していた業務は本社が引き取り、その他の業務も採用予定の者に割り振ることとし、Aはすぐ休業をすることができることとなり、解決した。

 

事例3 産休・育児休業を取得したことを理由とした不利益取り扱い援助事例

【事案の概要 申立て内容】

訪問看護師として働く正社員Bが、産休に引き続き育児休業を取得したところ、賞与の算定期間に出勤期間があるにも関わらず、賞与が全く支払われず、理由について説明を求めるも説明がされなかったことについて、出勤分について算定した賞与の支払いと会社の対応について謝罪を求めたい。

【労働局の援助内容】

会社に対して事情聴取を行った結果、Bの賞与が支払われなかった理由は、新型コロナウイルス感染症拡大による会社の業績悪化により、賞与の支給を全従業員行わないこととしたこと、その後取締役会で決定された新たな支給基準に基づき、新型コロナウイルス感染症拡大期間に 90%以上出勤した者に支払うこととしたが、Bが産休・育児休業を取得していた時期が支給基準を満たさなかったためということであった。
しかし、この賞与の支給基準の変更について、Bが会社に何度も不支給の理由について説明を求めた際に、説明をしなかったこと、新たな算定期間の全てが産休・育児休業期間と重なることからBは産休・育児休業を取得したことを理由とした不利益取扱いと受け取らざるを得ない状況にあることを指摘した。
会社は産休・育休を取得したことが理由ではないと強く主張し、労働局長からの援助は打ち切ることとなったが、その後Bは調停を申請し、調停において、会社は新型コロナ感染症拡大の影響で悪化した業績が回復に向かっていることや、助成金の支給も受けることができたことから、賞与が不支給になった労働者全員に個別に説明を行い、元の規定に則った支給をすることとなった。Bに対して賞与を支払うこととしたいが、謝罪はできないとのことであった。B及び会社は双方賞与の支払いに係る調停案を受諾し、合意解決した。

 

ご参考 神奈川労働局 「令和2年度 雇用均等関係法の施行状況