【新型コロナウイルスに関する労働問題】新型コロナウイルスの影響で売上が半減し経営が立ち行かない状況となり、事業の縮小・人員整理を検討する場合、従業員をすぐに解雇できるか。

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2020年06月04日

【新型コロナウイルスに関する労働問題】新型コロナウイルスの影響で売上が半減し経営が立ち行かない状況となり、事業の縮小・人員整理を検討する場合、従業員をすぐに解雇できるか。

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労働問題に詳しい杜若経営法律事務所が公開している資料では、以下のように説明しています。

 

(回答)

業績悪化が原因で、期間の定めのない契約の従業員(いわゆる正社員)の解雇(いわゆる整理解雇)を行う場合には、解雇を回避する方法がないか等を国の支援策も踏まえ検討し、慎重に判断をする必要があります。 

 

【ポイント】

○ 解雇・雇止めを行う際には、慎重な判断の下に行う必要があります
○ 国の支援策等も踏まえ、解雇・雇止め回避のための努力を行うことが重要です

 

[解説]

使用者が労働者を解雇する場合には、当該解雇に「客観的に合理的な理由」があり「社会通念上相当」であると認められる必要があります。これらが認められない場合は 解雇権を濫用したものとして当該解雇が無効となります(労働契約法16条)。

 

そして、使用者の経営上の理由による解雇の場合には、労働者の落ち度によるものではないため、いわゆる「整理解雇」として解雇の有効性については通常の解雇の場合よりも厳格に判断されます。

 

整理解雇の有効性については、以下の4つの要素の観点から判断されます。
①人員削減の必要性(人員削減措置が経営上の十分な必要性に基づいていること)
②解雇回避の努力(すぐに解雇と判断するのではなく、解雇を回避するために合理的な経営上の努力を尽くしているか)
③人員選定の合理性(対象者を恣意的ではなく、客観的・合理的な基準で選定しているか)
④手続きの妥当性(労働者に対して、経営状況、人員選定基準、解雇時期、規模、方法等について説明、協議を行っているか)

 

具体的には、経営状況を踏まえ、諸経費の削減、役員報酬の削減、新規採用の見送り、配置転換、一時帰休(労働者を一時的に休業させる)、残業規制、賃金・賞与のカット、希望退職者の募集等を検討し、その検討結果について対象となる労働者に対して説明、協議をする必要があります。また、新型コロナウイルスに影響を受ける事業主に対する雇用調整助成金の特例措置の拡大等の雇用維持支援策や、資金繰り支援等の政府等からの支援策に関する検討の有無についても考慮した上で、事業縮小・人員整理に踏み切るか否かの判断をすることも重要です。

 

なお、法人を解散し全労働者を解雇する場合については、事業を廃止することに伴う解雇であるため、基本的には「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」であると認められると考えられます。また、こうした場合には、法人を存続しつつ人員削減を行う整理解雇とは異なるため、上記整理解雇の法理は当然には適用されないと考えられます。

もっとも、解散に伴って解雇をする場合であっても、解散に至る経緯、解雇せざるを得ない事情、解雇回避の努力、解雇条件等について労働者に対して説明をすべきであり、かかる手続的配慮が全くないまま解雇が行われた場合には、「社会通念上相当」である解雇とは認められず無効となる場合も考えられるため、慎重に手続きを進める必要があります。

 

 

それでは、上記の経営危機にある状況であり、契約期間の定めのある方(契約社員、嘱託社員、アルバイト等の名称が多い)に、次回の契約更新はせずに期間満了で辞めてもらうことはできますか。また、期間途中で解雇することはできるでしょうか。

 

(回答)

期間満了で辞めてもらう場合でも、労働契約を終了してよいか慎重に判断する必要があります。また、期間途中の解雇の場合は、期間の定めのない場合の解雇よりも厳格な規制がかかるため、より慎重な判断が求められます。

 

ア 雇止め(期間満了による契約終了)の場合
期間の定めのある労働契約の契約期間満了時に契約更新を行わず、労働契約が終了することを、雇止めといいます(ex 4月1日から翌年3月1日までの1年間の労働契約を結んでいた場合に、翌年4月1日以降の契約を更新しないこと)。

 

契約期間の定めがあるため、契約期間が満了した場合には、労働契約の終了となりえますが、①期間の定めのない労働契約と実質的に同視できる場合や、②契約の更新に合理的な期待がある場合には、雇止めを行うにあたって、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であることが必要とされているため、注意が必要です(労働契約法19条1号、2号)。

 

①②に該当するか否かは、従事している業務の内容(臨時的なものか恒常的なものか)、更新回数・通算期間、更新手続き・管理の厳格さ、雇用継続を期待させる使用者の言動等の諸事情を勘案して判断されます。多数回ないし長期間契約が更新されてきたり、更新手続きが曖昧で形骸化していたりするような場合等には、期間満了というだけで契約終了とすることができない可能性がありますので注意が必要です。

 

①②に該当する場合には、上記整理解雇の法理に準じ検討の上、慎重に雇止めを行う必要があります。

 

イ 期間途中の解雇
期間満了での雇止めを待たずに、期間途中で解雇を行う場合は、当初の契約をしていた期間の途中で契約が解消されることになるため、より厳格な解雇規制が課せられ、解雇をするためには「やむを得ない事情」が必要であるとされています(労働契約法17条1項)。

 

よく勘違いされることがありますが、期間途中での解雇は、正社員を解雇する場合よりも厳格に判断されることになります。そのため、期間満了まで待たずに解雇に踏み切るか否かは、正社員を解雇する以上に慎重に判断する必要があります。