【新型コロナウイルスに関する労働問題】新型コロナウイルス対応で今後が不安、従業員の賃金についてはどのように考 えればよいか

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2020年04月30日

【新型コロナウイルスに関する労働問題】新型コロナウイルス対応で今後が不安、従業員の賃金についてはどのように考 えればよいか

 

給料袋のイラスト

労働問題に詳しい杜若経営法律事務所が公開している資料では、以下のように説明しています。

 

(回答)今後様々な事が起きる可能性があります。基本的な考え方を理解した上で賃金について決定しましょう。

 

【ポイント】
○ 法律の原則を踏まえながら、従業員の生活も考えて、会社の取るべき措置、方針を決めましょう
○ 休業補償は平均賃金の6割を支払えば労働基準法違反にはなりませんが、民事上は話し合い等で休業中の賃金を決めないといけません。

 

[解説]
(1)まず考えるべきは普段どおりに仕事ができる健康状態であるか

 

雇用契約は、働いている人が仕事をして、雇い主が賃金を払うことが主な内容になります。仕事をすることで賃金がもらえるわけです。言い方を変えれば普段どおりに仕事ができる健康状態でなければ、賃金を賃金を請求することができません。

 

(2)(普段どおりに仕事ができる健康状態にある場合)休業は不可抗力によるものか

 

普段どおりに仕事ができる健康状態にあるにもかかわらず、自宅待機を命じられた場合は賃金を請求できるのでしょうか。普段どおりに仕事ができる健康状態にあるのですから、本来は賃金を請求できます。もっとも、自宅待機を命じる理由が不可抗力であれば、賃金を請求できません。

 

人の力ではどうにもならない場合を不可抗力といいますが、現在の民法の仕組みでは不可抗力により従業員が仕事ができない(債務を履行できない)場合は、会社は賃金の支払いを拒むことができます(民法536条1項)。反対に不可抗力では無い理由で「債権者(会社を指します)の責めに帰すべき事由によって」仕事ができない場合は、会社は賃金の支払いを拒むことはできません(民法536条2項)。「債権者の責めに帰すべき事由によって」と言うと、会社にかなり落ち度がある場合を指すように思えますが、実際はかなり広く解釈されています。また、労基法26条も同じような規定を設けていて「使用者の責に帰すべき事由」により休業する場合は、使用者は労基法26条により平均賃金の60%以上を休業手当として支払う義務を負います。

 

(3)(普段どおりに仕事ができる健康状態にない場合)健康に支障を生じた理由は業務に関連したものか?

 

残念ながら現在において院内感染により医療従事者が新型コロナウイルスに感染している事例もあります。このような場合は労災保険法に基づき休業補償を得ることになります。
この場合、会社の管理体制に問題がある等すれば、労災保険の休業補償以上の補償を会社が行わないといけない場合があります。

 

Q 休業補償は平均賃金の6割を支払えばよいのでしょうか。

A 平均賃金の6割を支払えば労働基準法違反にはなりませんが、民事上は話し合い等で休業中の賃金を決めないといけません。

 

[解説]

(1)平均賃金の6割を支払えば労働基準法違反にはなりません

 

労基法26条は「使用者の責に帰すべき事由」により休業する場合は、使用者は平均賃金の60%以上を休業手当として支払う義務を負うと定めています。この「使用者の責に帰すべき事由」とはは不可抗力を除いて、使用者側に起因する経営、管理上の障害も含まれると言われています(要するに不可抗力と言えない場合は含まれます)。そのため、少なくとも平均賃金の6割を支払えば労働基準法違反にはなりません。

 

(2)労基法違反にならなくとも民事上はそれ以上の賃金を支払わないといけない場合もあり得る

 

平均賃金の6割を休業手当として支払えば労基法違反になりませんが、民事上は賃金を10割請求される可能性があります。もっとも、従業員と会社が合意、もしくは元々の雇用契約に基づけば民事上は問題ありませんので、就業規則・雇用契約書に休業の場合の休業手当を平均賃金の6割を支給すると定めていれば問題ありません。もしくは、労働組合との合意(労働協約)、従業員との合意(文書による合意)で休業手当の金額を平均賃金の6割以上で具体的に決めれば問題ありません。